「また、暑いと感じた場合、身体は汗を出すことで体温を下げようとします。 入浴や運動によって体温が上昇すると、極端な高温にならないよう汗をかくわけです。 反対に、睡眠中は副交感神経の働きが優位となり、休息を取ろうとする働きによって 体温も低下します。そのとき、体温を一定に保つために、本来であれば汗の量も 自然と少なくなるはずなのですが、コタツで眠ると、下半身の体温は下がらないため、 必要以上に汗をかき、脱水傾向になってしまいます」
必要以上に汗をかくことで、上半身は冷える。 さらに脱水によって口腔や鼻粘膜は乾燥し、ウイルスに対する抵抗力が落ちる。 加えて、睡眠中は唾液の分泌が減るため、分泌が多い昼間に比べて粘膜の防御力は弱く、 口に入ったウイルスを飲み込んで、胃酸によって殺してしまうといった対抗措置もできない。
自律神経の乱れと疲労の蓄積による免疫力の低下と、 脱水からくる粘膜の乾きによる抵抗力の低下、睡眠中の無防備さ…等々の要因が 幾重にも作用して、「コタツで眠ると風邪を引く」現象が起きてしまうと考えられる。
特に年末・年度末の忙しいビジネスマンの方は仕事の佳境時だけでなく、 ちょっと一区切りしたあとの気が緩むほっとした時間や、 あるいは飲み会のあった日のお風呂上がりなどにも注意が必要。
「高齢者の場合、喉の渇きに反応して水分を取ろうとする口渇中枢が衰えて、 水分補給を適切に行えないことも多々あります。
機能の衰えの悪影響という意味では、コタツで眠ってしまうことが招く危険は、 風邪だけではありません。私の患者さんには、ゆたんぽや、コタツに 長時間入っていたことで下半身に低温火傷を負い、壊死を引き起こしてしまう方が、 特に高齢者や糖尿病の患者さんではいまだにおられて、対応に苦慮しています。
朝までコタツで寝て、起きて寒い洗面所に行ったら胸が痛くなり、 狭心症を発症した患者さんもいました。血管内脱水を起こしたと思われます。
ほとんどは50代以上の中高年で、疲労がたまっている方々です。
なので私の個人的な実感としては、若い方にとってコタツは ストレス解放にも役立つ良い面があるものの、 年配の方には良くない方向に働くことが多い、といった感じです」
風邪を引きやすくなる理由は、コタツと体の関係以外にもある。
コタツを使用中はエアコンやストーブを使わない家庭も多いため、 室内は乾燥・寒冷環境下になり、インフルエンザウイルスなどが 増殖・活動しやすくもなるらしい。
「コタツで寝ると風邪を引く」のは、これらの事情が積み重なるためと言えそうだ。
とわいうけで、風邪を引きたくなければ、コタツでは寝ないことが一番。
どうしても寝てしまう場合は、設定温度は低めにして、水分をしっかり取り、 室温はインフルエンザウイルスが活発にならないよう 20度以上、湿度50~60%に保つようお勧めします。 |